No.9 不滅の旋律 観劇感想メモ
2018年観劇納め作品。純粋に好きな演劇でした。
2015年に上演された同名の作品の再演という位置付けの本作。
初演で加藤和樹さんが演じられたベートーベンの弟であるニコラウス役を推しが演じるということでいそいそと現場に行ってきました。
結論から言うと期待以上によかった〜!
…まあ出演時間10分だけだよって脅されたり、第九の既存のイメージに囚われない前衛的な物販デザインを先に見てしまっていたので期待値が下がっていたというのはあります……………。
でもそれ差し引いてもよかったよ!!!
ストプレだけどミュージカルのようでもあり、映画にも見えるし古典文学のようにも見える、多面的な舞台でした。
以下、心に止まった部分を箇条書き。
・何といっても生コーラスとピアノの生演奏が魅力の舞台でした。
コーラスの方も演技に参加しているのがとてもいい。伴奏の方も演者に絡まれて演技に参加しているのが素敵。
・舞台上から下がる線が美しい。五線譜のイメージ。
ルートヴィッヒの思い通りに事が進んでいるときはピンと張り詰めているのに(c.f.カスパールが言っていた『僕達の人生を楽譜のように思い通りにしたい』)、思い通りにいかない事があると揺らぐ。
張り詰めた状態も綺麗だけど揺らいだときがすごく美しくて好き。
ルートヴィッヒ失踪シーンでカスパール兄さんとニコラウスが線を揺らしながら走り回ってるのが気になりました。でも私の頭が悪すぎて演出意図までは読み取れず残念。
・初ナマ垣さんだったんですが、迫力あるルートヴィッヒでした。熱演って言葉がぴったりだ。気難しさと品の良さの表現がすごく良かった。
・あと剛力さんの美しさよ。華奢〜!!首長い〜!!Eライン美しい〜!!!
声にハリがあって、しなやかで強いマリア役にピッタリでした。佇まいにも品があって素敵だった〜
・ルートヴィッヒの幼い頃とカールの幼い頃を同じ子役の方が演じるのが良かった。小さい工夫だけど、ルートヴィッヒがカールに自分を投影しながらも、結局は幼い頃の自分と同じ目にあわせてしまっているのがわかりやすくていい。
・素直なニコラウスかわいいよ〜〜〜!!!!
ルートヴィッヒの、ナネッテさんやアンドレアスさんへの暴言は窘めるのに、メルツェルさんへの暴言は窘めない。胡散臭いって思ってるんだね、素直でかわいい。
・何度見ても酒場での合唱シーンはいい。大好きだ。
酒場という大衆の場で、かしこまった劇場で歌われるべき歌が大合唱されているのが最高にいい。
このシーンの前に、ルートヴィッヒは平民であることを理由にヨゼフィーヌさんにフラれる場面があるのが尚良い。
酒場での大合唱はルートヴィッヒが平民だからこそできる事だなあ、と感じました。平民の勝利が感じられる〜!素敵〜!大好きなシーン!
・ニコラウス髭似合わなすぎて一周回ってスタオベしたかった。
・個人的に、ニコラウスのマリアへの恋慕はもう少し伏線というか掘り下げがあっても良かったかな…。少しあっさりした印象を受けました。
ルートヴィッヒの気難しさ偏屈さに対しては、カスパール兄さんは少し諦め気味、ニコラウスは言っても無理だとわかっていても口を挟まずには居られない、という風に描かれています。
そしてマリアは無理だとわかっていても口を挟むタイプ。(正直そんな印象は受けなかったけど、ニコラウスがマリアのことをそう表現していたのでそういう設定らしい)
ニコラウスはマリアへの純粋な愛情というよりも、自分と同じタイプのマリアを救いたかったのではないかな、と思いました。その想いが、マリアと結婚してルートヴィッヒのもとから逃げるって結論に至ったのでは。
だからこそ、マリアがルートヴィッヒの秘書として活動を始めた後に再会した際に、ニコラウスはマリアのことを 昔と変わった、昔は無理だとわかってても〜 と寂しそうに表現したのかな、と思いました。
単純に「尽くしてくれる人が好き」説もあります。後に結婚した女性も家政婦をやってくれていた人だって言われていたし。そういう性癖か。
尽くしてくれる人が好きなのか、思い通りになる人が好きなのか、までは分かりませんでした。個人的には後者だったら最高。他人の人生を楽譜のように思い通りにしたがるルートヴィッヒとの兄弟感が感じられて良い。
あとは、既にルートヴィッヒがマリアに対して好意を抱き始めてるのに気づいていたからこそ、ルートヴィッヒからマリアを奪う目的でプロポーズした説。
暴君お兄ちゃんへの初めての反逆がマリアへのプロポーズだったら良い。私の性癖に刺さる。(ニコラウス本当に優しい子っぽいからこれはないかな…)
・マリアから「結婚おめでとう。奥様によろしく。」って言われたときに返事ができずに困った顔するニコラウスが好きすぎてあのシーンずっと繰り返し見ていたいです。
・場面転換も自然でした 。人々の喧騒に飲ませたり、号外ばら撒いて拾わせる演技で、前のシーンでぶちまけた五線譜回収したり…。
ピアノをピアノとして使うのはもちろん、酒場のテーブル代わりにも使ったりと、少ない舞台セットを活用した場面の表現が良かったです。
全体的に変な違和感がなくてとってもスマート。観ている側としても勉強になりました。
・アンドレアスさんのティータイムとベートーヴェンのティータイムの対比が好きです。
アンドレアスさんのティータイムは場を和ませるものだけど、ベートーヴェン家のティータイムはシリアスなもの。でもアンドレアスさん人として出来過ぎてるし影が無さすぎるし見てて逆に心配になってしまう。
・最後の抱擁シーン。抱擁の強さは関係性の強さを表現してるのかな、と思いました。
ナネッテはもちろん、ヨゼフィーネさんがきつくルートヴィッヒと抱擁を交わしていたのが良かった。
あとニコラウスがルートヴィッヒの肩に軽く触れただけだったのがめちゃめちゃ良かったです。冒頭ではピクミンのようにお兄ちゃんの後を付いていたニコラウスくんも自立したんだね…(泣いた)
・亡くなったカスパール(の魂とでも言えばいいのか?)は、上手から下手へ移動していたし、カールも上手から下手へ移動する途中で引き金を引いていたけどこれは、右が天国、左が地獄っていうキリスト教の考え方に由来するものなのかな。
(舞台側から見て右側/下手側が天国、左側/上手側が地獄)
・心残りなのはルートヴィッヒの呼び方の差について深く観察できなかったこと。
ヨゼフィーネさんが、その場面における関係性に応じてルイス、ルートヴィッヒ、彼を使い分けているのはわかったけど他のキャラはどうだったんだろう…
12月24日、25日公演のカテコでの「きよしこの夜」のハンドベル演奏もすご〜〜〜〜く良かったです。
一音しか出番ないけどバッチリ決めて周りのキャストに温かい目向けられるニコラウス可愛すぎて禿げるかと思った。
ベートーヴェン家の末っ子じゃなくてみんなの末っ子なんだね…かわゆ…シャンメリーとお菓子ブーツあげたいかわいさ………
心残りもいくつかあるけど、それでもとっても楽しい作品でした。
舞台セットは少ないけど、演者、コーラス、伴奏という人の力が合わさってすごく豪奢な作品に見えました。舞台映えする作品だ〜!
KAATで観れたのもとっても良かった〜音響が大事な作品だからKAAT大正解。新国立とかでも映えそう。再演の再演は新国立でいかがでしょうか。
平成最後のクリスマスに多幸感溢れる作品で観劇納めができてとっても幸せでした。
来年も素敵な作品に出会えますように!
おしまい